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 ― 前世、サマンサという女性の記憶の光景 ―


『お帰り、サマンサ』 
椅子に座っていた男性は私にそう言いながらクルリと椅子を
半回転しながら話してくれた。
〈あっ、私はサマンサという名前なんだ!?〉 
不意に名前を呼ばれて私は頭の中で戸惑いながら、
『お久しぶりです』と答えた。


 ― その星はオリオン星雲の中にある惑星の基地だった ー


男性のいる部屋は司令室か何か作戦会議室にみえた。
惑星全体を統括するために必要な装置だろうか、シンプルなデスクがいっぱいに設置されている。
かなり高度な文明を感じさせる。

デスクの前に広がる前方の眺めは、暗黒色の宇宙をバックにして広大な岩山だけが続いていた。
まるで砂漠みたいな風景で、人影も何にもない。
きっとこの部屋から出たら、空気もないんじゃないか?と思わせるほど無機質な光景だ。
この星は砂漠化した大地があるだけなんだろう。

椅子に座っていた男性の顔は人間とは少し違う造形をしていた。
人間と同じヒューマノイドタイプだが、顔がとても知的な感じがした。
目の色も銀色で体が半透明化していた。
話をしているのに一切口が動いていない。
いや、会話は言葉ではなく、テレパシーで行っている。

男性はその星の中心にある基地の中、責任ある立場にあるようだ。
司令官だろう。

私(サマンサ)は司令官に話した。
「荒れて何もなくなってしまったのね」

司令官は言った。
『この戦争はやっと終わったが、もうこの惑星はたくさん破壊された』

私は少し寂しそうに言った。
「このオリオン(惑星の名前?場所の名前?)も復活に時間がかかるわね」

そんなやりとりをしていたら、まわりが騒がしくなり、
気が付いたら何人かの女性がデスクに集まって来て仕事をはじめていた。
一人の女性と挨拶をかわし、ねぎらいの言葉をかけたような気がする。
司令官に私は言った。「また来ます。」
司令官は微笑みながら言った。
『いつでもおいで、ここは君の星なのだから』

気が付いたら意識が戻ってきて、自分の部屋にいた。
変性意識のなかで宇宙に行ってきたんだ。

そのころは宇宙の星をあちこち探索していた。
ほとんどが荒れた星だった。
まさにオリオン大戦の戦争後だったのかもしれない。

オリオン大戦の爪痕は悲惨な光景だけを残し、どれだけの犠牲があったのか私には知る由もない。
そこから私たちは何かを学んで今があるのかもしれない。


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